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2024年12月03日 [横浜の通船・ラインボート ]
【船舶接岸の手順】船を安全に係留するためのつなとり作業
はじめに
いつもポートサービスのブログを読んでくださり、ありがとうございます。このブログでは、船の魅力や豆知識など、船と海にまつわる興味深い話題を発信しています。今回のブログでは、船舶が接岸し、係留する際に行われるつなとり作業について深掘りしていきたいと思います。
つなとりとは?
つなとり作業は、船舶の安全な入出港を支える重要な作業です。この作業は、主に大型船が岸壁に接岸する際に係留ロープを取り放すことをいいます。このとき、大型船と岸壁の橋渡しとなるのがポートサービスの小型船舶です。接岸する大型船の周囲で小型船舶が機敏に動き回り、作業を進めます。
綱取り作業
入港する船舶が岸壁に接岸する際に、係留ロープを岸壁のビット(係船柱)に繋ぐ工程です。この作業では、船から降ろされた太く重いロープを迅速かつ安全に扱う必要があります。
綱放し作業
出港する船舶が離岸する際に、係留ロープを岸壁のビットから外す工程です。この際も、ロープの取り扱いには熟練した技術が求められます。▲大型船に接近して、係留ロープの受け渡しを行う小型船舶からの目線
天候や潮流によって変化する状況のなかで安全に作業するためには、本船(大型船)の乗組員や小型船舶を操船する船長と作業員、岸壁でロープを受け取る作業員との連携が重要です。
係留ロープの役割とは
係留ロープにはそれぞれ役割があり、船の大きさや天候、岸壁の状況に応じて岸壁に固定する本数が変わります。ポートサービスの作業員に話を聞いたところ、多いときだと9本ものロープの受け渡しを行ったこともあるそうです。
スプリングライン
船体の前後や横方向の移動を制御します。船首側から後方に、船尾側から前方に、それぞれ斜めにとる係留ロープのことをいいます。本船と岸壁の間に十分な距離がなく、小型船舶が入ると危険が予想される場合はサンドレットを投げて、岸壁に係留ロープを渡します。
サンドレット(ハンドレット):先端におもりが付いたロープを投げて岸壁にいる人にロープを渡すための道具。砂を詰めた袋をおもりとして使ったことに由来する。
ヘッドライン
船首側から前方の係留設備につなぎます。このロープは船の前後や横方向への動きを調整する役割があります。このロープを巻き締めることで岸壁に船体を寄せる役割もあります。
スターンライン
船尾側から後方の係留施設につなぎます。このロープはヘッドラインと同様、前後や横方向への動きを調整する役割があります。このロープを巻き締めることで岸壁に船体を寄せる役割もあります。
ブレストライン
船体の横移動を抑える効果があり、船体から岸壁に対して、ほぼ直角に取る係留ロープのことをいいます。干満の差が激しい港やうねりが進入する係留施設、貨物船など荷下ろしによって荷重が変化する船舶では、常に長さの調整が必要です。
ロープを取る順番はどうやって決まるの?
係留ロープを取る順番や本数は、本船(大型船)の船長の的確な判断により決まります。
本船(大型船)は着岸する際、なるべくエンジンを使いません。
その理由は、つなとりをする小型船舶などに水流の影響を与えないようにしたり、後進により船体が一方に動いてしまうのを防ぐためです。
そういった船体の動きの特性や天候・潮流などを見極めて指示が出されます。
例えば、船首側から風が吹く場合はヘッドラインを先にとります。反対に、船尾側から風が吹くときは、スターンラインを先にとり、行き足を押さえながら接岸させます。
行き足:船の前進する勢いや惰性のこと。
長い期間船を停めるときや、台風などの荒天が予想されるときは、前後共にさらに多くのロープをとります。
つなとりに密着
では、ここからはそれぞれのロープの役割を踏まえて、実際の作業でどのような順番でロープが取られたか見ていきましょう。
▲この日の天候は白波が立つほどの強風でした。そのため、前後の動きを制御するためのスプリングラインを先に取り、続けてヘッドラインもとりました。
▲続けて、大型船(本船)を岸壁に寄せる役割がある船尾側のロープをとりました。
▲さらに追加でヘッドライン(左舷側前方)が取られました。
▲動画では4本のロープを受け渡す様子がご覧いただけます。
おわりに
今回は船舶を安全に係留するためのつなとり作業を紹介しました。株式会社ポートサービスでは、船舶の入港時の、岸壁への網取り作業、網放し作業を行っています。各岸壁の特性・海況を熟知した作業員が、安全かつスムーズな繋離作業をサポートしています。動画でも小型船舶の活躍がご覧いただけるので、ぜひチェックしてみてください。
今回も最後まで読んでくださり、ありがとうございました。次のブログもお楽しみに🎵
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参考文献
日本財団図書館 海洋活動マニュアル
国土技術制作総合研究所 資料