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2022年06月02日 [安全に関して]
船を安全に運航するために【無線通信】
はじめに
前回までは救命備品についてブログでお話してきました。そして、今回は船を安全に運行する上で欠かせない無線設備のお話です。
海上無線・無線通信と聞いても、ピンとこない方のほうが多いと思いますので、まずはどんなものか見てみましょう〜💁♀️
写真中央に写っている黒い機械が、ポートサービスの交通船ネプチューンの無線です。これを使って、ほかの船舶と連絡を取ったり、距離を求めながら安全に航行をしています。
(画面に表示されているch16の秘密は海上通信システムの項目で👍)
そのほかにも、海上通信には以下のような目的があります。
海上通信の種類とその目的
1. 遭難・安全通信
遭難通信は船舶又は航空機が重大かつ急迫の危険に陥った場合に行う無線通信であり、安全通信は航行に対する重大な危険を予防するために行う無線通信です。
2. 航行支援通信
電波の性質を利用して、その位置又は電波発射地点に対する方位、距離を求めながら航行するために行う無線通信です。
3. 電気通信業務通信
船舶に対する電気通信役務を提供するための無線通信です。
4. 業務通信
陸上に開設された海岸局と船舶局あるいは船舶局間で行われる、自営用無線通信です。
5. 港湾通信
港湾内又はその付近で行われる船舶の運航上の操作、移動及び安全並びに非常時における人の安全に関する無線通信です。
海上通信システム
では、ここからは海上通信のシステムの一つ、国際VHFを紹介します。
国際VHFとは、入出港の連絡、船位通報、航行の安全、遭難通信、外洋でも船舶の相互間通信に使用されています。通称、マリンバンドとも呼ばれています。
まず連絡設定用チャンネルで相手船を呼出し、その後、通話用チャンネル(船舶用・海岸局用)に切り換えて通話を行います。冒頭の写真はch16ですね。ch16は、遭難・緊急の連絡や海上保安庁からの情報など重要な通信が入ることがあります。
国際航行に従事する船舶とも共通する設備だけあって、航行中の無線からは外国語が飛び交っていました😉
海の上では電波がない?
ここまで読んで、通信手段は携帯電話じゃいけないの?と思われた方もいるかもしれません。いまやどこでもつながる携帯電話。では、海の上ではどうでしょうか?
国土交通省では、海上での通信環境について、以下のように考察しています。
☑ 金属製の船体により、電波が遮断されやすい。
☑ 電波が通り抜けられる窓も、通常の建物に比べて小さく、数も少ない。
☑ 基地局からの距離が遠いことから、電波が減衰しやすい。
☑ 障害物がなく見通しがよいため、電波干渉が生じやすい。
☑ 基地局からの距離が遠い場合、基地局の電波は届いても携帯電話からの電波が届かない。
基地局の電波が届く場所であれば海上でも利用可能な場合がありますが、上記のとおり海上では通信環境が安定しない要素がそろった状況となります。そのため、携帯電話のネットワークが発達した現在でも、海上での通信手段には無線が用いられています。
無線設備の設置義務
「海上における人命の安全のための国際条約」(SOLAS条約)により、国際航海に従事する旅客船および総トン数300トン以上のその他の船舶に、船舶安全法により100トン以上の日本船舶にデジタル選択呼出装置を付加した無線設備の設置が義務付けられています。
SOLAS条約は映画でも有名になった タイタニック号海難事故(1912年)を契機として、船舶の安全確保のために締結された条約です。第一次世界大戦の影響で発効に至らないなど長い歴史の中で改正を繰り返し、今日に至ります。1980年5月15日に日本も加入しました。
また、日本の船舶の場合は、総務省が定める規則を満たした機器であることも要件とされています。
前述したデジタル選択呼出装置は特定の無線局との通信チャンネルを自動的に設定したり、ボタン一つで遭難警報を発する機能が備えられています。
一刻を争う緊急時には欠かせない装置ですね。こうして、長い歴史の中で船舶の安全が見直され、今回紹介したような無線設備の設置が義務付けられています。
おわりに
厳しい基準を満たした無線設備を使って、今日もポートサービスの船は安全に運航しています。今回の記事を読んで少しでも船に興味を持ってもらえたら幸いです。
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フォローしてもらえると嬉しいです😉😉😉参考資料
画像引用総務省 電波利用ホームページ|免許関係|海上通信
船舶安全法 - Wikipedia
国際VHF - Wikipedia
国際VHFとは|日本マリン無線協会