2024年12月10日 [横浜の通船・ラインボート ]
【季節で変わる!?満載喫水線】塩分濃度と水温が与える驚きの影響
はじめに
いつもポートサービスのブログを読んでくださり、ありがとうございます。以前の投稿で、船には色々なマークが書かれていることを紹介しました。その中でも、船の安全に大きく関わるのが、船がどれだけ水に沈んでいるかを示す喫水線です。この線は、海水の塩分濃度や水温とも大きく関わっていて、とっても興味深いんです。そんなわけで今回は、喫水線と塩分濃度や水温との関わりを深掘りしていきたいと思います。
喫水とは?
喫水(きっすい)とは、船が水に浮いているときに、船底から水面までの深さのことです。これは、船がどれだけ沈んでいるかを示す大切な指標です。
船にたくさんの荷物を積んでいると、喫水が深くなります。
安全の指標 満載喫水線の役割
船には満載喫水線という線があります。これは、船が安全に航行できる最大の積荷量を示していて、この線を超えて沈むことは危険です。
喫水線は、船がどれだけ沈んでいるかを一目で確認できるため、安全な航行を確保する上で重要な指標となっています。
▲出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について
上のイラストを見てみると、線がたくさん書かれていることがわかります。なぜこんなにたくさんの線が書かれているのでしょうか?これは航行する海域や季節によって、浮力に密接に関係する水の密度や海象(海の気象条件)が変化するためです。
では、ここからは満載喫水線の指標に関わる水の密度について見ていきましょう。
水の密度と浮力
浮力の大きさは、物体が押しのけた水の重さに等しくなります。水の密度が高いほど同じ体積の物体が押しのけた水の重さが大きくなるため、浮力も大きくなります。
物体の密度 < 水の密度 → 浮く
物体の密度 > 水の密度 → 沈む
物体の密度 > 水の密度 → 沈む
塩分濃度と浮力の関係
塩を水に溶かすと、溶けた塩が水の中に存在するため、水の密度が増加します。塩を溶かした海水は淡水よりも重いので、同じ体積の海水は淡水よりも重くなります。つまり、同じ体積でも淡水よりも海水の方がより多くの浮力を得られます。
したがって、淡水満載喫水線は海水の喫水線よりも高い位置に設定されます。これは、船が淡水域に入ったときに、海水時と同じ安全性を確保するためです。淡水では浮力が減少するため、より深く沈むことを考慮して、喫水線が調整されています。
なんでも浮いちゃう?死海の驚きの塩分濃度
死海というと、写真のように体が浮いてしまう様子をイメージする人も多いかもしれません。それもそのはず、死海の塩分濃度は30%にもなり、平均的な海水の塩分濃度のおよそ10倍にあたります。以前のブログでは海水がなぜしょっぱいか解説しているので、ぜひ併せてご覧ください。前項でも紹介したとおり、塩分濃度が高いほど水の密度が増し、大きな浮力を生み出します。この特性により、死海では人間が容易に水に浮かぶことができます。
水温と浮力の関係
次に、水温による浮力の違いについて見ていきましょう。
水温が低くなると、4°Cまではその密度が高くなります。冷たい水は分子がより密集するため、同じ体積でもより重くなるからです。
水温が4°Cのときに水の密度が最大となり、この温度で浮力も最大になります。それよりも高くなると、水の密度が低下し、浮力が減少します。これにより、船は水中により深く沈むため、満載喫水線は高く設定されます。そして、水温が4°Cから低下すると、水の密度も低下し、浮力が減少します。
しかし、季節による水温の変化以外の要因(海象の違いなど)も考慮して、実際には夏期は喫水線が高く、冬期は喫水線が低く設定されます。これは、冬期の荒れた海象に対応するため、より多くの予備浮力が必要となるからです。
水は重い?お湯は軽い?
具体的な例を見てみましょう。お風呂に入ったときに水面の上のほうだけ熱くて、浴槽の下の方はぬるかったという経験、ありませんか?
水温は低い方が密度が高く、重くなります。つまり浴槽の下に移動します。逆に水温が高いと密度が軽く、水面の方に移動します。
おわりに
今回は満載喫水線と水の密度の関係を紹介しました。同じ船舶でも受ける浮力が変化することを考慮して、満載喫水線は細かく分類されています。
それにしても、海水も淡水も、コップに入った水もお湯も同じように見えるのに、浮力が変化するなんて不思議ですね。余談ですが、私(編集担当)は『温水プールだと泳ぎづらいのに、冷たいプールだといつもより泳げる!』と密かに思っていました。水温と浮力の関係を調べていて、確信に変わりました😀今回も最後まで読んでくださり、ありがとうございました。次のブログもお楽しみに🎵
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参考文献
Wikipedia 喫水とは
ギモン雑学